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ピロリ菌が作り出す病原タンパク質が血液により全身に運ばれることが解明 [ピロリ菌]

ピロリ菌が作り出す病原タンパク質が血液により全身に運ばれることが解明

2016年1月9日、京都大・東大・神戸大などの研究チームがピロリ菌に感染した胃がん患者の血液からピロリ菌が作り出すCagAタンパク質を発見したという研究成果を英国のオンライン科学雑誌Scientific Reportsに発表しました。

CagAタンパク質とはピロリ菌が産生する病原タンパク質のことです。1200個のアミノ酸からなる構造をしており、胃内部でピロリ菌は自身がもつ注射針のような部位を通して胃壁細胞にCagAタンパク質を注入します。CagAタンパク質の細胞内での働きは多くく分けて2つあり、1つ目は胃表面にある上皮細胞の細胞内バランス(細胞極性)を制御している酵素の働きを抑えることで胃粘膜細胞を破壊するはたらきです。2つ目は細胞増殖機能を活性化することで細胞の異常増殖を促し上皮細胞をガン化させる働きです。
ピロリ菌が産生するCagAタンパク質について




ピロリ菌由来のCagAを全身に運ぶ小胞を発見(日本語)
これらの働きによりピロリ菌に感染することが胃がん発症要因となることは以前から知られていました。しかし今回、その原因タンパク質であるCagAが血液を通して全身に行きわたっているという事実が報告されたわけです。

CagA自体はタンパク質であるため、そのままの血中に入っても失活(働きを失うこと)してしまうわけですが、報告によると、CagAタンパク質はエクソソームという脂質2重膜で覆われた小胞の中に組み込まれた形で血流を移動しており、エクソソーム内部にあるCagAを他の細胞内に移して24時間培養するとCagA特有の細胞形態(ハミングバード表現型)へと変化することが見出されました。このためエクソソームにより他細胞内へ運ばれたCagAタンパク質は(上皮細胞でガン化を引き起こす)生物活性を有していることが示唆されました。

ガン治療の経過観察において「転移」はガン治療の壁の一つとなっていますが、ガン細胞の転移要因に「エクソソーム」密接にかかわっていることが徐々に明らかとなっています。がん細胞はエクソソームを分泌することで、転移先の細胞に入り込む前から、転移先細胞の細胞環境を変化させること(自分の住みよい環境へと教育する)が見出されており、エクソソームにより教育された転移先細胞はガン細胞を好意的に受け入れることが確認されています。つまりがん細胞はエクソソームを「引っ越し業者」のような道具として利用しているわけです。

ピロリ菌が原因とみられる胃がん以外の疾患としては、血液疾患領域のMALTとよばれるリンパ腫の一種がピロリ菌が原因であり、除菌により治療することがわかっています。また心疾患領域ではCagA陽性ピロリ菌に感染した心疾患患者さんの心筋梗塞発症リスクがオッズ比で1.72倍高いという報告があります。

今回の発見によりピロリ菌により放出されたCagAタンパク質が「胃上皮細胞以外の部位での疾患要因であろう」というこれまでの臨床報告の裏付けとなった形となりました。今後、全身に運ばれたCagAタンパク質の具体的な働きがさらに見出されることをフォローする必要があると思います。

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